「思いどおりに作詞ができる本」書籍レビュー

田口俊著「思いどおりに作詞ができる本 リスナーの心をつかむ歌作りの実践テクニック」の書籍レビューです。

参考になったポイントをいくつか大まかに紹介します。

作詞はリスナーの代弁

基礎中の基礎としてまず作詞は自分の気持ちを書いてはいけないと筆者は言います。
作詞というと、「自分の気持ち、言いたいことを表現するもの」だと思いがちですが、”文学的”でなく”音楽的”な歌詞を書くにあたって適切ではないということです。

リスナーはあなたが主張しようとしていることなど何も興味がなく、自分のことをリアルに反映されている作品に出会おうとしているのです。

つまり作詞の基礎とは、作詞はリスナーの代弁であり、楽曲を結びつける触媒である。

サビ・Aメロ・Bメロのそれぞれの作り方

書く順番

音楽的な詞を書くには、詞は1行目から書いてはいけない
サビから作り始めるのが基礎になります。
それは、コンポーザーやアレンジャーの作る順番に合わせて作るということです。
私も作編曲をしますが、多くはサビから作りますよ。

作曲やアレンジと順序を合わせると、サビ→Aメロ→Bメロとなります。

サビの作り方

  • サビはプリミティブな(最初に口について出る原始的な)フレーズを
    ・・・一番エモーショナルなメロディやアレンジのフレーズには一番エモーショナルな言葉が乗るべき。「会いたい!」「寂しい!」「好き!」「悲しい!」など、小学生でもかけるシンプルな感情を。
  • How(どれくらい)でオリジナリティを
    ・・・「”のどから手が出るほど”欲しい!」とか「”目のなかに入れても痛くないほど”かわいい!」とか「”猫の手も借りたいほど”忙しい」のように、感情が「どのくらい」なのかの表現でオリジナリティを出す。
  • メーターの振り切っていない感情でもトライ
    ・・・エモーショナルの温度の低い感情も書いてみる。「まったり」「ぼんやり」のような。

Aメロ

  • サビの感情に至った瞬間のきっかけの出来事を書く
  • “Reason”(理由)ではなく“きっかけ”を書く

だんだん時間がすれちがい、だんだん会話もなくなり、だんだんお互いの優しさもなくなり、やがていがみ合うようになって……これが別れた”Reason”です。

ある日同じTVを観ていて自分はつまらないのに相手だけがある場面で笑った。その瞬間別れようと決めた。電話するって言われたのでずっと電話を待っていたがかかってこず、携帯電話をベッドに投げた。その瞬間別れようと決めた。これが”きっかけ”です。

  • 客観的に書く

●激しい雨←→窓を叩く雨
●静かな部屋←→時計の音が響く部屋
●君は悔しそうにうつむいた←→君は唇をかんでうつむいた

“激しい” “静かな” “悔しそうに”はそれを見聞きした人の主観です。”窓を叩く” “時計の音が響く” “唇をかんで”は見たまま聞いたままの客観です。

  • ドラマチックすぎるきっかけにしない

初心者にありがちな”ドラマチックすぎるきっかけ”として以下の3つが挙げられています。

  1. 雨が降ってくる
  2. 夕焼け
  3. 思い出の(遠い)場所

悲しいときは必ず雨が降るでしょうか?
リスナーにとってのリアルを書くために気をつけておくポイントですね。

Bメロ

サビ、Aメロは同じ「瞬間的な今」を書きますが、
Bメロでは過去もしくは未来の長期のことを書きます。
Aメロでは書いてはいけない”Reason”を書いても良いです。

作曲・編曲に準じた作詞

これらの方法は作曲や編曲に準じた作詞の方法です。
サビはシンプルでエモーショナルなメロディだから、歌詞もシンプルでエモーショナルに。
Aメロは楽器のあらゆるパートが淡々と作られ、淡々と演奏される。だから、歌詞も淡々と客観的に。
このように、この本では作編曲を大事にした音楽的な詞の書き方が書かれています。

作詞の準備

作詞の準備は以下のような順序で行います。

1. 音源を100回聴いて、メロディを覚える

聴きこめばメロディから言葉が聞こえてくる。

2. ターゲットとなるリスナーのリサーチ&研究

  • テーマはターゲットとなるリスナーに合わせて決める。

テーマとなる要素

  • ターゲットとなるリスナーの性別、年齢、家庭環境
  • サビから得られるインスピレーション(感情)
  • 曲調(アレンジ)
  • どのような人たちにライヴ会場にいてもらいたいかをイメージする

3. Aメロ、Bメロ、サビのアレンジをアナライズ

音楽としての詞を書くためには、その曲に携わるすべてのパートを理解することが不可欠。

4. 息継ぎの箇所をチェック

息継ぎする箇所が作詞の際の句読点となる。

5.字数表を作る

  • 字数表の例

A
2・4
2・4

7・3

B
6・3
6・3

  • 基本的にメロディをラララで歌った数を指で数えながら作る
  • 数字を書いた後に句読点を入れる

3・3、4・3。

句点(。)はヴォーカリストが息継ぎをするところで、読点(、)では息継ぎをする場合としない場合があります。

  • 字数と文節を対応させる。自然な例と不自然な例として以下のものが挙げられている。自然:青い空が (あおい 3 そらが 3
    不自然:光と影 (ひかり 3 とかげ 3)「と影」が「トカゲ」に聞こえてしまう。

おわりに

やはりこの本の一番の特徴は音楽的な詞を書こうという姿勢
音楽の一要素としての歌詞を書くには…ということが、わかりやすく書かれています。

この姿勢は作編曲をする身として好感が持てます。

作詞をするうえで普段から行うべきこととは?

何よりもまず音楽を聴き、CDを買い、そして音楽を愛しましょう。

そして、巻末に

  • 楽譜の基本的な読み方
  • 覚えておきたい音楽用語集
  • 押さえておくべき洋楽アルバム15選

といったページもあり親切です。

音楽を理解せず、詞を書いてしまっている方にはぜひ読んでいただきたい1冊です。
また、自作曲に歌詞をつけたいけどなかなか上手く書けないという方でも、実践的な内容が非常に役に立つのでオススメですよ。

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