KONTAKT専用ソロストリングス音源「Cinematic Studio Solo Strings」(CSSS)のレビューです。
CSSSは、Cinematic Studios Seriesの第三弾として2017年9月にリリースされました。Cinematic Studios Seriesはストリングス音源「Cinematic Strings 2」(CS2)を開発したAlex WallbankとCinematic Samplesチームによって制作されています。このシリーズはCSSSの他に、ストリングス音源「Cinematic Studio Strings」(CSS)やピアノ音源「Cinematic Studios Piano」(CSP)がリリースされており、また、金管、木管、パーカッションのリリースを控えています。
概要
- 値段は$299
- バイオリン1、バイオリン2、ビオラ、チェロの4つの弦楽器を収録。
- Kontakt専用のライブラリ。Kontaktとその無料版のKontakt Playerの両方に対応。
- Close、Main、Roomの3つのマイクポジションと、それらをミックスさせた少ないリソースのMixサンプル。
- オーストラリアのTrackdown Scoring Stageで録音。
奏法
- Sustains / Legato(Repeated NotesとPortamentを含む)
- Spiccato
- Staccatissimo
- Staccato
- Sforzando
- Pizzicato
- Bartok Snaps
- Col Legno
- Harmonics
- Tremolo
- Trills(半音と全音)
- Measured Tremolo(BPMに同期、または任意)
- Marcato / Runs
- Con Sordino Emulation(全奏法で可能)
パッチ
メインパッチ
- CSSS Violins I
- CSSS Violins II
- CSSS Violas
- CSSS Cellos
- CSSS Full Ensemble
- CSSS Lite Ensemble (Sustain,Staccato,Pizzicato)
Classic Legatoパッチ
- CSSS (Classic Legato) Violins I
- CSSS (Classic Legato) Violins II
- CSSS (Classic Legato) Violas
- CSSS (Classic Legato) Cellos
- CSSS (Classic Legato) Full Ensemble
CS2のシステムを模倣した、レガートスピード変更の機能がない使いやすいパッチです。
特徴
音色
美しい、綺麗な傾向の音色です。ウェットなせいか、柔らかな音に感じられます。また、空気感のある抜けるようなハイも特徴的。使いやすく、そのままでも気持ちの良い音です。ドライで硬めの音をお求めの方には合わないでしょう。
操作性
CSSと共通の操作性です。
アーティキュレーションはキースイッチ、またはMIDIコントロール(デフォルトではCC58)で切り替えます。他のストリングス音源でもよくある操作なので、手早く使用することができるでしょう。GUIもシンプルで見やすく、直感的で扱いやすいです。
CSSと同様、レガートの操作性(レガートスピード変更)が独特ですが、レガートスピード変更のないClassic Legatoパッチも用意されています。
使い方
ほぼマニュアルの日本語要約です。
GUI / メインスクリーン
GUIは3つの主要なセクションに分かれています。
- 左側:リバーブ・ミキサー
- 中央:アーティキュレーション
- 右側:アーティキュレーション固有のコントロール
リバーブ・ミキサーセクション
ホールタイプのリバーブを使用できます。しかし、Trackdown Scoring Stageの美しいトーンや力強さを保持するには、リバーブをゼロに設定して(デフォルトの設定のまま)使用するのがおすすめとのことです。
ミキサーには4つの選択可能なチャンネルがあります。
- Close
- Main
- Room
- Mix
デフォルトでは”Mix”チャンネルがアクティブになります。このチャンネルは3つのマイクポジションがミックスされており、RAMとCPU使用量1/3でスタジオのフルサウンドを得ることができます。
この“Mix”チャンネルを使用するのがおすすめとのことですが、クローズとアンビエンスの量を調整したい場合は、各フェーダーの下にある電源ボタンのアイコンをクリックしてここのチャンネルをロードすることができます。
※”Mix”チャンネルと他のチャンネルの両方を同時にアクティブにすることはできません。
アーティキュレーションセクション
各アーティキュレーションのキースイッチは各タイルの左上に表示されます。
アーティキュレーションのキースイッチの割り当てを変更するには、Shiftキーを押しながら変更したいアーティキュレーションのタイルをクリックし、新しく設定したいキーを押すことで可能です。(同じ機能がLegatoとCon Sordinoスイッチでも使用できます)
また、Altキーを押しながらアーティキュレーションタイルをクリックすることで、不要なアーティキュレーションをメモリから削除することができます。
アーティキュレーション固有のコントロールセクション
選択されているアーティキュレーション固有のコントロールが表示されます。
アーティキュレーション
Sustains / Legato
レガートスイッチをオンにすることで、モノフォニックレガートラインを演奏したり、和音を演奏しないようにすることができます。逆にオフにすることで、和音を演奏することができます。
Legatoの3つの選択肢
CSSSにはレガートの選択肢が3つあります。
- Classic Legato:CS2のシステムを模倣したもので、最も扱いが簡単。
- Standard:2段階のレガートスピード。リアルな打ち込みが可能。
- Advanced:3段階のレガートスピード。リアルな打ち込みが可能。
Classic Legatoパッチは最も使いやすく、CS2ユーザーにはよく知られている使用感ですが、最大のリアルさを実現するためには、Standardを使用するのがおすすめとのことです。CSSSはAdvancedよりStandardの方がリアルに聞こえる傾向があるようです(カルテットやファーストチェアにおいても)。
StandardとAdvancedはスイッチで切り替えます。
Standard Legato
ベロシティで以下の2つのレガートスピードをコントロールします。
- Fast(遅延100ms):ベロシティ 65-127
- Medium(遅延250ms):ベロシティ 0-64
Advanced Legato
ベロシティで以下の3つのレガートスピードをコントロールします。
- Fast(遅延100ms):ベロシティ 101-127
- Medium(遅延250ms):ベロシティ 65-100
- Slow(遅延333ms):ベロシティ 0-64
レガートリアルタイム入力の練習について
GUI上のレガートスピードインジケータを見ながら練習するのがおすすめとのことです。
注意すべき点は、グラデーション的にレガートスピードが変化するわけではないということです。レガートスピードはFast、Medium、Slowの3段階であり、例えばベロシティ20と58は同じスピードです。
Repeated Notes
同じ音を反復する場合、サステインペダルをオンにして演奏することで自然につなぐことが可能です。
Portamento
ポルタメントはノートのベロシティを20以下にすることで可能です。またこの「20」という数値は、右上の歯車マークのボタンから設定セクションを開き、Portament Velocityの数値を変えることで変更が可能です。
また、ポルタメントはCC5を使ってオンオフを切り替えることが可能です。このCCは設定セクションのPortament On/Offで変更できます。
Chords
レガートスイッチをオフにすると、和音の演奏が可能になり、エンベロープ設定パネルが表示されます。
エンベロープ設定パネルでは、和音のフェードインやフェードアウトの時間を設定できます。Ctrl +クリックでデフォルト設定に戻すことができます。
Non vibrato
CC2を0にすることでビブラートがかかっていないサステイン、レガートを演奏することができます。
Trills
トリルは半音、または全音の2つのキーを同時に押すことで演奏することができます。単音で押しても音は鳴りません。
Staccato
4つの異なる奏法が用意されています。
- Sfz
- Staccato
- Staccatissimo
- Spiccato
これらはモジュレーション(CC1)、もしくはアーティキュレーションキースイッチのベロシティで切り替えることができます。
Pizzcato
3つの異なる奏法が用意されています。
- Col Legno
- Bartok Snap
- Pizzicato
これらはStaccatoと同様にモジュレーション(CC1)、もしくはアーティキュレーションキースイッチのベロシティで切り替えることができます。
Marcato
マルカートはランやアクセントに効果的です。
ダイナミクスは主にモジュレーション(CC1)を使ってコントロールしますが、ベロシティも各ノートの音量に影響します。
特に速いパッセージの演奏は、マルカートを使用するのがおすすめとのことです。Spiccato OverlayのON/OFFができるので、両方試してみるのが良いでしょう。
Measured Tremolo
ホストのBPMに同期させるか、手動でBPMを設定するかを選択できます。また、Measured Tremoloは150-220BPMの間で最も良い音を出します。
ショートノートの遅延について
ショートノートは60msの遅延があります。この遅延はよりリアルにするための意図的なものです。
トラックディレイで60ms速める(つまり-60msと設定)、
または手動で音符を前にずらしてテンポに合わせましょう。
Con Sordino
ONにすることで、コンソルディーノのエミュレートが可能です。
その他
デモ楽曲のMIDIファイルをダウンロード
YouTubeのIntroducing Cinematic Studio Solo Strings、Cinematic Studio Solo Strings – Articulation Demoの各動画の動画説明欄からデモ楽曲のMIDIファイルをダウンロードできます。打ち込みやアレンジの参考になります。音源と同じミックスにする設定内容が書かれているテキストファイルも付属しています。
購入を考える際に参考にすべきリンク
VI Control Forum
VI Control民のCSSSに対する反応を見ることができます。また、ユーザーによってCSSSを使用し制作された楽曲を聴くことができます。
YouTube
動画は操作性や音をより知ることができます。2017年9月12日現在、数は少ないですが、これから海外コンポーザー勢が有用な動画を投稿していくかと思います。